2016年に使い始めて来年以降もお世話になるであろうフリーVST、VSTi12個
今年もあとわずかですね。よく使ういわば「殿堂入り」とも言えるプラグインは既に2014年にご紹介しました。私自身も数年たった今でも使っています。
2016年になって使い始めたフリープラグインの中で「これは来年以降も使いたい」と思ったものをピックアップしてみました。スタンダードなプラグインをご所望な場合は2014年の棚卸の記事を見ていただくとして、今回はちょっとディープで突っ込んだDTMをするときに使うプラグインが多いかもしれません。
※個々のプラグインごとに「おすすめ度」と「対応OS」を書いてます。一点注意ですが、対応OSはあくまで私が確認できた環境というだけで「未確認」のものでも突っ込んだら案外動くかもしれませんのでこの点だけご注意ください。
スペクトラム・アナライザ(スペアナ)
どの帯域にどれくらいの音量が出力されているかを可視化してくれるメーター系のプラグイン。VSTエフェクトとしてトラックに指して使います。最終的には自分の耳を信じるべきだと思いますが、メーターを目安として使用することは個人的には賛成です。
Voxengo SPAN
フリーのスペアナといえばコレ!というほど浸透しているようなので既に持ってる方も多いと思います。いくつかスキンが用意されていて自分が見やすいデザインに変更できます。Routingメニューから「mid-side stereo」を選択するとM/Sモードになるため、M/S処理をする際にも使えます。
イコライザー/コンプレッサー
EQ、Compです。基本となるエフェクトであちこちのトラックにエフェクトインサートして使うと思います。今回ご紹介するのはちょっと特殊なEQ/COMPです。
M/S処理に使用
ざっくりM/Sについて軽く説明すると、「音源のMID(センター部分の音)とSIDE(両端の音)」のことを言います。一般的にM/S処理とは、SIDEの音量を上げることで音圧向上を図る処理のことを指します。SIDE成分の音量を上げると当然ステレオ感が増しますが、やりすぎると空中に浮かんだようなフワフワした音に変質してしまうので限度を考えて使用することが望ましいとされています。
Mequaliser
MFreeEffectBundleに含まれるイコライザーです。これでどうやってSIDEの音量をあげるの?という疑問が浮かぶと思いますが、実は非常に簡単にできます。右側メニュー部の上から2番目当たり「L+R」と書いてあるボタンを押すとプルダウンが開きますのでその中から「SIDE」を選択します。そしてGAINを上げるだけです。非常に簡単かつやり過ぎなければ自然に音圧アップが望めますが、さほどCPUを食わないため動作が軽快です。
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Blue Cat's Gain Suite
ゲインコントローラ詰め合わせです。この中のBlue Cat's Gain (Dual)というやつがMID-SIDE個別にGainがかけられます。前述のMequaliserと比較して少し歪むような印象を受けます。その歪みがサチュレーターをかけたようなほんのりしたまろやかさを生みます。
音圧アップと合わせてサチュレーターもかけたいなら是非こちらを使ってみてください。
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ステレオイメージャー
どの帯域にどれくらいの音量が出力されているかを可視化してくれるメーター系のプラグイン。VSTエフェクトとしてトラックに指して使います。最終的には自分の耳を信じるべきだと思いますが、メーターを目安として使用することは個人的には賛成です。
A1StereoControl
かの高級オーディオプラグインメーカー「waves」さんのS1ステレオイメージャーっぽいやつです。色々ボタンがありますがとりあえず「STEREO WIDTH」ツマミをいじっておけばOKでしょう。定位感やステレオ感を可視化された状態でコントロールできるため使い勝手の良さは秀逸です。
今年の12月31日まで限定ですが、3000円くらいのステレオイメージャーが無料でダウンロードできるのでこちらも宜しければどうぞ。
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トランシェント
聞きなれない方もいるかもしれませんが、アタックやリリースをコントロールするプラグインです。アタックを強めたり弱めたり、リリースをパツンと切ったり逆に伸ばしたりできます。単発系のドラム/パーカッションや、リリースがだれ気味のベースなど、リズム系の楽器に使うと効果的です。
TRANSIENT
これぞTransient、という処理を施してくれます。アタックを強調したり、リリースの増減処理を行ったり。結構がっつりかけても自然に仕上げてくれます。x2ボタンをONにすると文字通り倍の濃さでエフェクトがかかるため、かなりガッツリかけることも可能で、できることの幅が広いです。
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サチュレーター
言わずもがな、サチュレーターです。歪みを加えて音を変質させ、アナログっぽい感じを付与します。
PhreePhuzz
実は2年前にちょろっとご紹介してそれきりだったんですが改めて使用してみて使い勝手の良さに感動したため2016年では大活躍してくれました。軽快な動作と歪みのバリエーション(A-FのTypeが分かれていてそれぞれ歪み方が異なる)が素晴らしいです。A,C以外はがっつり音色が変わります。AないしCだと100%にしても潰れない程自然な感じ。
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Saturation Knob
つまみの1/3らへんに劇的に変化するスポットがあるらしく、それ以上にすると音の歪みが目立ちます。
変化の感じにくいサチュレーターにしてはアクティブな変化で、ボーカルにオーバードライブかけてローファイなエフェクトをかけたいときにこれが役に立ちます。限定的な使用場面ですがボーカルにかけるとイイ感じなのでご紹介させていただきました。
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VSTi音源
商用音楽への利用が可能でクレジット表記が不要と思われるVSTi音源を3つご紹介。サンプラー音源系ってライセンス文章をよく読むと実はクレジット表記が必要だったり、商用不可だったりします。Kontakt等に同梱されているVSL(Vienna Symphonic Library)なんかは説明書をよく読むと「ライナーノーツにクレジット表記してね」と書いてあります。有料音源ですら気が抜けませんから、フリーの音源はなおさら気をつけないといけません。
少なくとも私が調べた限りはライセンス的に大丈夫そうでしたが、ご心配であれば別途作者様にお問い合わせすると安心ですね。
SampleTank Custom Shop
老舗サンプリング系ソフトウェア音源、SampleTankの無償版です。こちら、実は過去に(2010年くらいだったかな)SampleTank 2.5 Freeを期間限定で配布していたんですがそのときの音色をImportして使用できます。SampleTank CS単体では対して多くない音色数ですが、過去の資産がそのまま使える点は素晴らしい。
サポートさんに「御社のソフトウェア音源を使ってCD作って商用で売るときはクレジット表記とか必要ですか?」と問い合わせたところ、「基本、音楽制作に使う分にはOK。弊社製品の音色をそのまま(あるいはテンポとか微妙に変えただけで)サンプリングCDを作って公開とかしたらその時は許さん」とのお返事でした。サポートさんすごく親切でした!
VSCO2 Community Edition - Bigcats VSTi version
オーケストレーションに必要最低限な楽器は一通りそろいます。結構リアルです。欲を言えばViolins Sectionのアタックが遅めなためポップス系や早めの曲には使いにくい点ですね。とはいえトラックを2つに分けて一方をアタックの遅いArco Vibモードで音をだし、もう片方をSpiccatoにして混ぜるとアタックの早さが求められるシーンでもつかえます。
元々、VERSILIAN STUDIOSのVSCO2の無料版はSFZ形式で配布されているようで、それをBigcatsさんがVSTiにしてくれたようです。VSTiならsfzプレイヤーも不要で誰でもすぐに使用できますからね。非常に便利です。
本家サイトに「The entire sample set is now under a Creative Commons Zero license (pseudo public-domain).」と書いてありますね。Creative Commons Zero(略称 CC0)ライセンスは以下のサイトで確認できます。
Orion Sound Module(配布中止)
2019年12月追記、残念ながら配布中止になってしまったようです。
音によって玉石混交ですが、マルチ音源として多くの音色がゲットできる点は魅力的です。以下、この音色はいいなーと私的に思ったものをピックアップしました。
- iowaシリーズ
- Alto sax nv
- Bass Trombone
- French Horn
- Soprano Sax NV/V
- MIS Piano
- DX EPiano
- Rock Organ
- Ethan's Triangle
- Ethan's Claves(ラテン音楽に、クラーベ叩きたくなる)
- Kelon Xylophone (民族っぽい音楽の主旋律にも使えそう)
- Marimba(いわゆるマリンバっぽさはなく、クラビっぽいけどこれはこれで良い)
- Turtle Drum(アフリカンドラムっぽくもできるし、EQ次第で和太鼓っぽくもなる)
- Classic Guitar(いわゆるナイロンギターっぽさが良い)
- Harp(Hypersonicとかマルチ音源に入ってそうなオケ混ざりの良いハープ)
バスーンはあるのにOboeとかクラリネットがないから木管は惜しいなーと思いつつ、結構リアルで良い音色も多くてびっくり。
「The idea behind the Orion Sound Module plugin is to provide a rompler based on public domain samples that can be used to create royalty-free loops.」ということで、元となる音色はパブリックドメインのサンプル音とのこと。
以上、2016年から使い始めたおすすめフリープラグインでした。
今回は少し特殊なものが多かったかもしれませんが、一つでも気に入るプラグインがあれば幸いです。それでは少し早いですが、良いお年をお迎えください。来年もギター講座オンラインをよろしくお願いいたします。